大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)677号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人水本信夫の上告理由第一点について。

記録によると、原審第一〇回口頭弁論期日以前には原裁判所を構成する裁判官は幾度か更迭したが、昭和三三年四月二二日の最終(第一一回)口頭弁論期日には原判決書に署名したのと同じ熊野、南、岡野の三裁判官が関与して従前の口頭弁論の結果の陳述が行われたこと口頭弁論調書上明白であり、原判決は基本たる口頭弁論に関与した裁判官によつてなされたものであるこというまでもなく、所論の違法はない。

同第二点について。

所論は、被上告人(原告)は当事者適格なく、本訴は不適法として却下されるべきであると主張する。けれども、判示「神理教美玉教会維持講」と称する日掛頼母子講は判示のような組織のもので被上告人は同講の管理人であつて講金の取立、支払等について一切の権原を有し、上告人は右講の二〇口に加入し落札給付を受けた上その返掛債務について被上告人との間に判示準消費貸借契約を締結した事実、その他原審が第一審判決を引用して確定した事実関係の下では、同講の管理人である被上告人は本件訴訟について自己の名において当事者たることができるのであり、そして、仮りに講自体に当事者能力があつても管理人が当事者適格を有することの妨げとはならないものと解するを相当とする。されば所論は理由がない。

同第三点について。

所論は理由不備をいうが、頼母子講管理人が掛戻債権取立につき自己の名において原告となりうる場合には、裁判所は原告の請求を認容することができるか否かを判断すれば足り、右債権が管理人個人の債権とは異ることについて特に所論の如き判示をする必要はないと解すべきであるから、原判決には理由不備の違法なく、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 河村又介 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例